DIARY 2000年冬


12月2日 猫が行方不明

「Chacun cherche son chat」という素敵な映画があります。邦題「猫が行方不明」。行方不明の猫を探す女の子とそれを手伝う近所の人達の交流、パリの下町を舞台にしたコメディタッチの作品。
 でも実際猫が行方不明になってみると、彼女のような行動力はとても出てこない。ただ途方に暮れて歩き疲れて、でも一睡もできなくて。

きのう、うちのネモが行方不明になりました。このサイトの右下で足を投げ出してる子。もともと逃亡癖がある。いつもは逃げ出しても近所の塀の上や草の影から気配を感じることができた。きのうはそれもなくて。
 朝まで探し回って「動物の探偵さん」に電話をしようと思ったその時、ドアの向こうで「にゃあ」と一声。体中の力が抜けた。するりと入ってきて平然と朝飯を食って、いま食後の昼寝をしている。ただ妙に臭い。後でドライシャンプーの刑だ。

人間1人・猫2匹で暮らすこと7年。喜びも苦しみも一番多かったこの7年間を横でじっと見つめていた彼らは、僕の家族というより同士です。目の前でペットが死んでいく場面には何度も遭遇したけど、それは自然の摂理。生き別れることの方が遥かに辛い。まあなんにしろ帰ってきてよかったと、いう興奮だけでこの文を書いている。この気持ちを判れ! と言っても判りようがないね。

高木ブー計画進捗状況:やっと3コード覚える。楽しい!

12月8日 海の幸・山の幸

頂いたチケットでダンス映像の上映会を見る。 音楽が自然音の模倣から始まったとすれば、 映像の楽しさは動物の動きのトレースにあるはず。 だから動きに自覚的なダンサーの作る映像がつまらないわけがないのです。ドゥクフレの「アブラカタブラ」はやっぱビデオで欲しい!
 その上映会を途中で抜けて、今度は新高円寺へ。 「僕もドゥクフレ好きです」と言ってくれた鈴木惣一朗さん率いるWorld Standardのイベントへ。

鈴木さんと牧村憲一さんの対談がとても面白かった。音楽には海のものと山のものがある。で、ポップスは海の音楽であると。大貫妙子さん「海と少年」、Flipper's Guitar「海へ行くつもりじゃなかった」 。確かに牧村さんの手掛けたポップスには常に「海」がついてまわる。でもFlipper'sは海へ行くつもりじゃなかったんだよね。
 海へ行くつもりじゃなかったのにレコード会社の意向で海へ行ってしまったのは、ポップスの究極形Beach Boys。さよならアメリカさよならニッポンと叫んで大平洋に落下し、ポップスの港を訪ね歩いたのは細野さんと大滝さん。

お二人の真似をして、「猫の音楽」「犬の音楽」ってキーワードを考えた。このサイトの読者は圧倒的に猫派が多い。猫のことを書くとたくさんリアクションを頂きます。
 Brian Wilsonは古くはバナナ&ルーイ、今はポール&リンゴ、完全に犬なんだよね。鈴木惣一朗さんも全面的に柴犬支持だそう。ムツゴロウ動物王国のような家庭に育った僕は、猫派を装う両刀派。実家にはポチという名の柴犬がいました。僕が心を込めて命名しました。猫派で思い出すのは矢野顕子さん。湖のふもとで猫と暮らす彼女は「海」か「山」か。そもそもなんで湖の「ほとり」じゃないんだろうか。

高木ブー計画進捗状況:アップストロークができないと、あのシャッフル感は出ないのね...。

12月13日 いいこととわるいこと

ホロホロ鳥にホロホロ鳥と命名した人は天才だ。彼らはホロホロ鳥であり、ホロホロ鳥以外の何物でもないのだが、並み大抵のセンスではあの語感にはたどり着けません。
 Sound Edit 16で音源編集の日々。ヘッドフォンをかけて作業していると、ときどき頭の中で「ピーン」とアラート音が鳴り響く。それを聴く度に、何かひらめいたような錯覚を覚える。天才とは。

辛い夢を見て目を覚ますと、たいていお腹の上にデブ猫が乗っている。おまえのせいでうなされたんだコラ! 苦しい夢の世界から一転、ペットと暮らす幸せな現実に振り戻されるわけですが、お腹の上の彼は夕方まで寝ている僕に呆れ、空腹でメローな状態に陥っているのです。
 ささやかないいこと、ささやかな悪いことは表裏一体だ。今日のいいこと。いかしたマッチを発見。案外こんなところに脱出のヒントが隠されているのかも知れない。

今年は邦楽の当たり年でした。幸いなことに、生まれてこのかた「最近の音楽シーンはつまらない」と感じたことがない。

高木ブー計画進捗状況:ストロークの安定が当面の課題。

12月20日 現代の晩年

ギターを持ったお笑い芸人ポカスカジャンのワンマンライブを見る。ギター2本で「寅さんのテーマ」Crimsonバージョンを熱演。音薄かったけど面白かった! でもさっぱり受けず。
 11月29日の日記にも書いたけど、お笑い好きはCrimsonなんて知らないんだよ。やっぱ音楽イベントの合間にぽこっと出るのが彼らのベストポジションのような気がします。微妙な芸です。タマちゃんのギターテクをみなさんにも聴いてもらいたい。

このサイトのポジションはどこだ? 最初はただ自分のためにメモを書いてるだけだった。それがいつの間にか語りモードに入っちゃって。そういや昔はテクノとか聴いてたけど、テクノを語るスノッブな文化が嫌になって聴かなくなっちゃったんだよね。
 Paul Williamsとか、ロック誕生の現場を目撃している人が純粋にその興奮を伝えようとする姿は美しいさ。でもロックは20世紀の重さを背負わされて、ロック評論がどんどんロックから離れていっちゃった。その行き先がS誌だったりRadioheadの言動だったりするわけです。

クロスレビューページRock Crusadersを更新しました。2000年のロックを振り返るお話。最初と最後で辻褄が合ってないのはご愛嬌。言いたかったのはですね、「ロックよもっと身軽になれ」と。ロックは20世紀と一緒に死んで、たかがポピュラー音楽の1ジャンルに戻ればいいと思う。ほんとそう思う。
 松本亀吉さん「歌姫2001」面白かった。人には薦めませんが。要は音楽評論の形を借りた極私的女の子評なんです。一度でもモーニング娘。を語ったことがある人は全て彼の影響下にあると言えましょう (近田春夫さんを含む) 。崇高な「音楽ファン」としては恥ずかしい側面を、Quick Japanというサブカルチャーの鎧の中で暴露していったのが彼ですが、鎧を外してみると「音楽を語る文化」へのアイロニーになっている。

... (時間の経過を表現)
こんな文章を途中でやめてTin Panのライブを見に行った。すげえ。これから全国を廻る彼らのためにも詳しい説明は避けますが、みなさんの想像できる範囲でひとつ。「機関車」。これに僕はぶっとい涙を流しました。どれくらいぶっといかというと、星飛馬の姉くらいです。いままでこんなことはなかった。ロック。20世紀。そしてミー。現代の晩年に。

高木ブー計画進捗状況:良識ある住民として小さな音で練習しているわけですが、たまに大きい音を出してみるとコードをちゃんと押さえられてないことに気づくね。

12月24日 きっと君はこない

だって呼んでないんだもの。しょうがないんだよいろいろ。
 神はこういうダメ人間のために「明石家サンタ」を遣わしたのだと思う。僕はさんまに対して特別な好意も悪意も持っていませんが、あの番組だけは格別。日本中のダメ人間の心を結び、寂しいアパートの灯ひとつひとつにメリーなメリーな彩りをそえてくれるのです。でも電話かけたことないんだよ。彼らが欲しているのは辛いけど痛くない微妙な線なんだ。自虐セラピー。電話交換係は常に危険な選択を迫られている。

結局こんな日でした:日記を書いてからひとり街へとくりだし、Noahlewis' Mahlon Taitsのインストアライブを見る。どういう因果か打ち上げに連行され、鈴木惣一朗さんに「山下くんシャツのボタンしめすぎ! 守りに入ってる!」って突っ込まれた。面白い話をいっぱい聞いたんだが、何より「音楽を発する人」と「受けてるだけの僕」のバイタリティの違いに打ちのめされた。

12月28日 マニマニ

先月くらいから、薬を飲まないと脳が起動できない。やっと起動してもクロック周波数が異様に低くておしゃべりとか全然ダメ。ベッドでごろごろしてたら、ウクレレデュオの相方 (お互いの演奏を聴いたことがない) が江ノ島デジカメ散歩に誘ってくれました。
 極めてスロースターターな2人のこと、現地についた頃には太陽が大きく傾いて、砂浜に長い影を作ってた。宇宙に太陽と地球が浮かんで、太陽の光を僕が遮るから地球に影ができる。

吹きつける風と うちよせる波よ
沈む太陽と 延びてゆく影よ
果てしない海よ 変わらない海よ
いつも助かるよ どうもありがとう (奥田民生)

海水は月の引力を感じて、沖へと帰っていきました。海を見ると人間がいかにちっぽけな存在で以下省略。またこよっと。
 帰りに鎌倉でお茶。「あなたはいざというときに、動物的勘で間違った方を選んじゃうから、ゆっくり考えながら社会復帰した方がいいと思う」とアドバイスを受ける。そうか、僕に欠けてるのは動物的勘だったのか。基本的にアニマルな要素はことごとく欠けていると思います。場の空気を読む、とか。人生一歩一歩。

高木ブー計画進捗状況:D7→Gができない。そもそも楽器の持ち方を間違えてるような気がしますね。

12月31日 Rock And Roll Lullaby

SOUL & INSPIRATION Barry Mann
oui The Sea And Cake
selmasongs Bjork

新人賞:Linus of Hollywood
反則:Senor Coconut

1月1日 正月みたいな空

新世紀の始まりは、どうってことない朝でした。そんなことは前からわかってた。
 少年時代の僕にとって、1999年・2000年・2001年という数字は輝く未来の象徴でした。Newton別冊「21世紀はこうなる」とかワクワクしながら読んでた。でも21世紀になったって、相変わらず染乃助・染太郎は傘をいつもより多くまわしてるし、サザエさんはお魚くわえたドラ猫を追いかけている。チェイサー・サザエ。

昨日と今日がくっついてゆく世界。宇宙の摂理から見れば、世紀が変わることなんて何の意味もない。人が生きていることにだって何の意味もないのです。だからせめて僕が生きている「価値」だけは欲しいと、この馬鹿みたいに青い空に思う。誰かのために。
 今年もよろしく。
 今年はよろしく。
 今年こそよろしく。

1月7日 その脚で立ち上がれ

ピチカート・マニアのみなさん今晩は。「BOSSA NOVA 2001」いいアルバムですね。あれからもう7年になるのか。あの頃、2001年の彼らがどうなってるかなんて想像できました? 正月早々のCM出演にはびっくりした。音楽的な手詰まりは隠しきれないが、当時と変わらず得体の知れない存在感をキープしているようで嬉しい限りです。

ラジオから流れてる / TVにも映ってる
街中が噂をしてる / 電話して起こしたりしないで (野宮真貴)
2001年のきょう / クレオパトラは / 眠りから目覚めるの (小西康陽)

起こしたりして欲しくない野宮真貴さんは、最後のカットでPARCOのロゴに隠れてしまいますが、目覚めた小西康陽さん、ほんのコンマ何秒かの出来事なんですけど、まるでロゴの出る位置を察知したかのようにひざをついて立ち上がるんです。
 左側の写真はロゴが出る前、右はロゴが出た瞬間。ね。このバイタリティーだ、人生に必要なのは。

高木ブー計画進捗状況:デュオの相方がニューウクレレを購入。触らせてもらった。弾きやすい! 僕もがぜん新しいのが欲しくなる。山野楽器銀座店の店員さんも言ってました。妥協せず最初からいい楽器を持った方が結果的にお得だと。僕が書くと説得力ないけど、彼の言葉はまるで人生訓のようでした。

1月15日 Lost & Found

大事なファイルをなくしてしまいました。中に入っていたのはライブのチケット4枚、健康保険証、社会保険料の請求書、住民税の振込用紙etc。日本に生まれて28年、いまだに社会の仕組みがわかっていないので、これらの書類を紛失した場合どこに報告するべきなのか知りません。途方に暮れた。ライブのチケットだって大切な友達との約束を裏付ける書類なんだ。たぶん燃えるゴミと一緒に捨てちゃったんだ。

その翌日、今度は燃えないゴミを慎重に選別してゴミ捨て場へ。部屋に戻ってみるとドアが開いていて、またしても猫が脱走してるじゃありませんか。12月に脱走した際、読者の方から「猫は本格家出の前にプチ家出するものなので注意した方がいい」とのアドバイスを頂いたことを思い出しました。

ところが。なくしたファイルはなぜかバイト先の社長室のモニターの隙間にて発見。猫もすぐに帰ってきた。Lost→Found。この2週間に起きた様々な出来事を思い起こしてみると、決していいことばかりじゃなかったけれど、とりあえず収支決算が合っていることに気づく。TVをつけてみれば、生後6時間で誘拐された21世紀の子も無事保護されたそうで。
 どう? 21世紀の住み心地は。悪くない。悪くない。

1月20日 作文は苦手でした

学級文集に選ばれない率ではクラスでもいい線いってたと思う。小学校の卒業文集の原稿は、ついに書けませんでした。結局どうなったんだっけな。みんなが「6年間の想い出」とか「中学生になったら」とか書いてるそばで、僕だけ「遠足のこと」とか昔の作文が載ったような気がします。

何が言いたいかというと、今月はやたらと作文しなくちゃで非常に辛い。どうしてこうも締切りが集中するのか。一応こんなことについて書く予定→ いずれどこかで公開されると思います。
 現在僕コミュニティ拡大キャンペーン中なので、頼まれごとは一通り引き受けてますが、本当はFLASHとかバシバシ使ってWEB制作のお仕事がしたいのです。みなさんよろしく。

クロスレビューサイトRock Crusadersがそろそろ更新されてるはず。お題はTodd Rundgrenです。

高木ブー計画進捗状況:何日か触ってなかったら超ヘタになってた。だって忙しかったんだもん。

1月24日 眠ってはいないよ

オリコン小池聰行さん死去。20世紀の日本のポピュラー音楽界において、絶対のステータスは紅白でありオリコンでありました。良し悪しはまた別にして、これはまぎれもない事実です。小林幸子さんが紅白での巨大な衣装 (舞台装置) を辞め、そして小池氏が逝く。合掌。
 小林幸子さんの最後の衣装をデジカメで撮っておきました。20世紀の想い出に (ほんとはこの路線を浜崎あゆみさんが引き継ぐのではないかと踏んでいる) 。

我らがウクレレデュオは、練習もせず「江ノ島に行く会」へと変貌しつつある。大学からほど近かった江ノ島は、同窓生にとってどこかノスタルジックで特別な場所なんです。ぼんやりと波をみてハマグリを食べて、ちょっとだけホッとして帰ってくる。自分を信じて行くのだぴょーん。そうしようそうしよう。
 しかし橋! なんとならないのかあの橋! 寒すぎ。

江ノ島名物「江ノ電沿線かるた」を購入しました。噂に違わずいい味出してる。
え:江ノ電に 乗りたかったと 頼朝くん
ね:眠っては いないよ大仏 半眼開き

群馬名物「上州かるた」っていうのも見てみたい。群馬県民なら「必ず」やらされる謎のカルタがあるんだそうです。いっこだけ知ってるのがある。
つ:鶴舞う形の群馬県

高木ブー計画進捗状況:初の合同練習に向けて秘密の特訓をするはずだったのだが。

2月1日 からまわる世界

大雪が降ったり飛行機がぶつかりそうになったり椎名林檎が妊娠したり元ユニコーンの川西幸一が人名救助したり家賃を滞納したり2日連続でドタキャンくらったりしているうちに21世紀も1/1200が過ぎゆき、そして僕は腰が痛い。ええっ君も痛いの?
 「いつか僕らも腰痛の話題で盛り上がるんだろう」なんて笑っていた18の頃が懐かしいです。将来はコレステロール値や血糖値について語り合う予定。

目が覚めてブラインドを開けたら一面の銀世界! たったそれだけのことで幸せの絶頂を感じることができたのは何歳までの話かな。いつの間にか、自分に訪れるもっと嬉しいことや悲しい現実を知って、他人と比較するようになる。「知る不幸」ってあると思う。ベターライフに目が眩んで、くだらない幸せを見逃して。
 雪が溶けかかってまだらになった歩道。除雪されてないところを選んでザクザク歩く子供達。僕も真似してみました。そしたらツルっとフランス子守歌、危うく転倒しかけた。腰!腰! いま腰を打ったら、人生でも屈指の苦痛を知ることになるだろう。

高木ブー計画進捗状況:合同練習は雪のため中止。

2月10日 アイデアの引出し

先月の日記に「Flashとかバシバシ使ってWEB制作のお仕事がしたい」って書いたせいか知らないが、なんとなくそういう状況になってしまった。やばい。本当はFlashなんて触ったこともないのです。このサイトだって、ローテクの粋を集めてSimple Text (メモ帳みたいなもん) で手書きしてるの。どうもすいません。
 あわててFlashの有名サイトをひとまわり。それからDreamweaverというソフトを触ってみた。これは得意分野かも。くだらないアイデアがあっという間に実現しちゃいそう。知らない間に世の中こんなことになってたんですねえ。

いったん業界の底辺についてしまうと、泥の中で空騒ぎしてるうちに人生が終わる。あぶないところだった。ところがいざチャンスを与えられると、くだらないアイデアの引出しが開かなくなっていることに気づく。何年も使ってなかったからなあ、ガタガタやってれば直るかしら。
 もうひとつの心配は、ちゃんと出勤できるかっていう。定期的にオフィスに赴く仕事なんて9ヵ月ぶりなんですよ。たった数時間で疲れ果て、帰りのコンビニではぼんやりしてるうちにレジをスルーしてそのまま出口へ。カゴの中に何も入ってなかったんで万引きにはなりませんでした。28歳で万引きはさすがにどうかと思う。

2月17日 アルジャーノン

やばい。やばいです。自分が着実に馬鹿になっているのがわかるのです。同じ雑誌を2度買ったり、ロッカーの鍵を閉め忘れたり、キーボードを打ち損じたり、辻と加護の区別がつかなかったり。たぶんSNRIの弊害だと思うんだけど。風邪をひいてるみたいに、意識が朦朧として軽い耳鳴りのような状態が続いてます。
 プールに行って体を動かすとちょっとすっきりする。毎日ちゃんと、脳を叩き起こして寝かしつけきゃいけないのだ。願わくば海パンを履き忘れませんよう。猥褻物陳列罪に当たる。

自分の日記を読み返してみると、ある時期を境に内容が薄くなっていることに気づきました。別にその頃から調子が悪くなったという訳でもなく、むしろ「眼に生気が戻ってきた」って言われてた頃だと思う。自分では上がり調子のつもりだったんだけど、上がるでも下がるでもなく脳の活動自体が抑えられているだけなのかも。
 日記を書いていると、自分の変動がよくわかります。このままだんだん馬鹿になっていくんだろうか。嫌だなあ。アルジャーノンのお墓に花束をよろしく。

Dan Hicksのライブ見ました。ユルくてかっこいい。「Dan Hicks」という人生は楽ちんそうに見えるけど、実際は辛かったそうです。会場で萩原健太さんと川勝正幸さんと長門芳郎さんを目撃。帰り際にU.M.さんとばったり。お互い人見知りなので、目が泳ぎまくった。その翌日にハンズの裏で明和電機ご一行様を目撃。社長が電飾のかぶりものをしてた。人にはいろんな生き方があるなあ。一発ネタの積み重ねで食いつなぐ「明和電機」という人生は辛かろうと思う。

高木ブー計画進捗状況:相方がテルミンを購入。僕の胡弓やパロデリュビアと合わせたら、相当ストレンジなユニットになりそう。

2月22日 鼻たれちゃってもスマイル

「Soft Rock In JAPAN」を読みました。60年代、70年代のバンドについては知らないことも多くて、さすがはVANDA。しかしFlipper's Guitarの紹介がたった半ページというのはいかがなものか。オメガ・トライヴの見開きファミリーツリーまでついてるのに。オメガ・トライヴってソフトロックだったの?
 このサイトの読者にVANDA関係者がいらっしゃることは承知しております。承知しつつ敢えて書きますが、かの名著「SOFT ROCK A to Z」と同じスタッフの仕事だとは思えませんでした。すいません。

太古からお父さんたちは、いわゆる「渋谷系」以降を意図的に排除してきた。なんでか。元来レコードコレクター道とは暗くて寂しい道のりだったのです。要するにモテなかった。
 彼らは、山下達郎のように「服を買う金があったらレコードを買う」ミュージシャンをリスペクトしました。オメガ・トライヴみたいなドメスティックなモテに対しては、別に敵意はなかった。でも、マニアックなくせにスポットライトを浴びた渋谷系界隈には近親憎悪が生まれたんだと思います。しかもポップスの聖地、アメリカやイギリスに軽々と乗り込んでしまう。

僕がFlipper's GuitarやOriginal Loveを素直に聴けたのは、彼らより年下だったからかも知れません。若くて耳が肥えてておしゃれなバンドが出てきたら、やっぱ色眼鏡で見ちゃう。いまさら渋谷系と呼ばれるLove Psychedelicoとかさ。嫌いじゃないけど購買意欲もわかない。いや、実はちょっとわいてる。
運命なんたらなんたらそれから
浮いてるなんたらなんたらいつでも
鼻たれちゃっても君は目の前でLast Smile

ってとこ、ほんとはなんて歌ってるのか気になるのです (言ってる意味わかります?) 。

クロスレビューサイトRock Crusadersを更新しました。それからFREE HANDというサイトのアルバムレビューをお手伝い。

高木ブー計画進捗状況:相方お疲れ気味のため、ひとり秘密の特訓に励む (予定) 。新メンバー勧誘の動きあり。絵描きがいるバンドってのもいいよね。ゲルニカ?

2月26日 僕はデイドリームビリーバー、そんで

2月22日 (猫の日) は父の命日で、墓参りにでも行こうと思ったがテレビの前でぼんやりしてるうちに時間が過ぎてしまった。
 John Faheyの訃報がネットを駆け巡ってます。テレビでこういう話題を取りあげてもいい。芸歴42年、でもこれからの人。昭和のJim O'rouke、と呼んでるのは世界中で僕だけかも知れませんが。聴いたことない人はとりあえずこれを探してね。合掌。そして父にも合掌。

筑紫哲也さんの「幸福論」が面白い。ニューミレニアム1年余。社会はなにも変わってないようで、やっぱり変わってる。同世代の人達が彷徨いはじめてる。筑紫さんのお子さんは写真家を目指してるそうで、父子のぎこちない会話がリアルでした。彼は親のスネをかじるという負い目と闘っている。僕は一旦ドロップアウトして、でも会社に戻ろうとしている。僕の方が平凡な道を選んでいるようで、実は無理してるみたい。
 冷蔵庫からヨーグルトを取り出そうとしたら、手前に栄養ドリンクが並んでいて途方に暮れた。まず栄養ドリンクを出して、ヨーグルトを取ってから元に戻す。その手順を考える気力がわかなかった。

久しぶりに映画を観ました。「Dancer In The Dark」。みんなは救いのない映画だと言うけど、僕は救われた。素晴らしかった。セルマは日常生活のノイズの中から立ち昇るリズムに乗って、音楽と空想の世界に逃避することができる。手持ちカメラで不安定に描かれる現実、それがいかに悲惨だったとしても、心の中を流れる音楽に耳を傾ければ、世界は完璧なカメラワークで踊り出す。ミュージカル嫌いのタモリさんにぜひ観て頂きたい1本です。
 セルマの現実と僕の現実は比べ物にならないけど、僕だって音楽を心の隠れ家にしながら現実を生きてきた。これからもたぶんそう。レイトショーの帰り道、Gary UsherのBeach Boysカバー集を買いました。で、あれもこれも聴きたくなって朝までBeach Boys祭り。

追記:僕が漠然と思っていたことを、同じころ鈴木惣一朗さんが言葉にしていました。モンドくん日記 ジェフさん来日揺れる週間。2月22日の話を26日に更新するという完璧なシンクロニシティ。しかしなんたる語彙の差だ。